- 書名:エンジニアのための伝わる書き方講座 文章嫌いではすまされない!
- 著者名:開米瑞浩/著
- 出版者:技術評論社
本書『エンジニアのための伝わる書き方講座 文章嫌いではすまされない!』は、ITエンジニアが技術を活かすための、伝わる文章を書く方法を学べます。
あなたがあらかじめ予想して警告したにも関わらず、会社が聞いてくれなかった。
そして予想通り「困った事態」が起きてしまい、残念な思いをした。
そんな経験はありませんか?
周囲に認められるべき存在である、本物の技術力を持ったITエンジニアにこそ、おすすめしたい1冊です。
なぜITエンジニアの声は、経営者を動かせない?
とあるオフィスにて、経営者の怒号が鳴り響いていた。
経営者「パソコンが使えなくなるだって? どういうことだ? こんな短期間に更新する予算なんかないぞ!!」
エンジニア「2年も前からさんざん言ってたじゃないですか…。」
Windows XPに限らず、こういうケースはよくあります。
2年も前から警告していたのに、ITエンジニアの声が経営者(上司、他部署、顧客)に届かない。
問題が大きくなり、直前になって慌てふためく。。
ITエンジニアと経営者は、前提となる知識、常識が異なります。
例えば経営者の前提知識は、事務用PCの耐用年数だけです。
「パソコンが使えなくなる? 何を馬鹿なことを言ってるんだ、パソコンなんて5年は使えるのが普通だろうが! どうしていきなり使えなくなるんだよ?」
一方ITエンジニアは、セキュリティリスクの大切さも知っています。
でも未だ起こっていないリスクの大きさを伝えることは、案外難しいです。
実際Windows XP問題でも、多くのITエンジニアが事前にリスクの大切さを伝えても、理解してもらえませんでした。
結果、割増料金を支払い急遽PC買い替えをする企業が続出し、ちょっとした特需が生まれたほどです。
なぜこのような特需が生まれてしまったのでしょうか?
人間は、わからないものには価値がないと判断し、知らないものを恐れるものです。
基本的に嫌いな相手の話は聞きませんし、不愉快な言い方をされると理屈が正しくても拒否したくなります。
だから解決策がいかに論理的に正しくても、それだけでは提案が受け入れられません。
ITエンジニアは、とても論理的です。
論理的であるがゆえに、伝え方を誤れば、相手は「やりこめられた」と思ってしまいかねません。
そこまでではないにしても、伝わらなければ価値がないのと同じです。
100%技術力を生かすためには、ITエンジニアに「伝える力」が必要です。
経営者などからすれば、プログラムを見ても技術力がどれくらい高いかはわかりません。
完成した商品のを除けば、報告書、説明書、提案書、仕様書などから技術力を判断するほかありません。
だからこそ、報告書などの他人に伝える文章は、「目に見える技術力」になるのです。
報告書などの文章は、「見ることができる」技術力。
本書『エンジニアのための伝わる書き方講座 文章嫌いではすまされない!』は、ITエンジニアが技術を活かすための、伝わる文章を書く方法を学べます。
本書で学べる内容は以下になります。
- ITエンジニアが躓く、基本的な文章の書き方
- ITエンジニアではなく、顧客や同僚がわかりやすい書き方
- システム仕様の説明書や障害報告書の書き方
- 製品マニュアルや教育資料の書き方
- 仕様書の正しい読み方、書き方
- 箇条書きや文章で書かれた情報を元にして、そのイメージがわかる図解をする方法
- 現場と経営層の意識の違いを埋め、組織を動かす文章の書き方
- 製品紹介プレゼンで、興味を引き付ける書き方
- 技術の細部を説明せずに、当社の技術力がどう役に立つかを整理して伝える方法
相手に合わせて、誤解の無いよう過不足なく、わかりやすく書く方法がわかります。
誤配送連絡からApache設定ファイル、SSID、インシデント説明といった、17個の書き方事例は参考になります。
人間の認知情報処理モデルの観点が含まれているので、対応する相手によって文章スタイルを変えれるのも良いですね。
「なるほど!」と思った中からピックアップ。
文章の価値は、書く前の準備で決まる。
どれだけ準備したかで勝負が決まるように、文章も書く前が重要です。
ポイントは以下6つ。
- 分類してラベルをつける
- 意味のある順番で並べる
- 数量化してグラフを使う
- メッセージを入れる
- 相手の価値観を考える
- 情報量を減らす
伝えたい内容を分解・分類・整列・ラベリングします。
わかりにくい文章は、あっちに飛んで、こっちに飛んでと内容がバラバラです。
要素をグループにわけることから始めます。
新聞や雑誌の記事はお手本にならない。
必要なのは「文章」ではなく「情報」です。
例えば、「寝不足→居眠り→交通事故」の因果関係を文章にするとします。
B.は文章を書きなれているように見えますが、誤解を招きやすいです。
- 彼は昨夜寝不足だった。その結果運転中に居眠りをしてしまった。その結果、交通事故を起こした。
- 彼が運転中に居眠りをして交通事故を起こしてしまったのは、昨夜寝不足だったからだ。
雑誌や書籍などの商業メディアの記事は、「読者が興味を持って楽しく読んでくれる」ための書き方です。
システム開発の文章は、「必要な情報が短時間で正確に伝わる」ために書きます。
「楽しませる」文章テクニックは、不要どころか有害です。
ITエンジニアの仕事は、「上司から言われたことを言われた通りにやること」だけではない。
ITエンジニアだけに限りませんが、言われたことをやるのは基本です。
自分の担当領域において「問題」を見つけ、何をするべきかを提案するのも仕事です。
それには「状況把握」→「方針立案」→「行動提案」というワークフローを経ます。
「方針立案」はロジカルに問題解決を考える工程。
「行動提案」は関係する人間を説得する工程です。
「行動提案」は一連のストーリーにする。
スムーズに受け入れてもらえるよう、相手にわかる言葉で順番に説明します。
- 関心:相手に関係する話題を振る。
- 問題点:理想と現実のギャップを見せる。
- 課題:こうしよう、こうすべきだという内容を説明する。
- 解決策:具体的な解決策を提示する。
- 効果:成功した場合のメリットを説明する。
- メッセージ:最後に言いたいことをまとめる。
人間の脳内情報処理は、同時処理型、継次処理型がある。
- 同時処理型:全体像を把握してから細部を位置づける。
- 継次処理型:細部を順番にたどる。
どちらの型かを判断するには、例えば昨日の飲み会で何を食べたかを聞きます。
- 同時処理型:テーブルの映像を思い出す。
- 継次処理型:食べた時系列で思い出す。
文章は継次処理型に適した表現手段です。
同時処理型の人には、図で説明する方が効果的です。
「専門用語ばかりでわかりにくい」=「あなたが嫌いorあなたを信用していない」。
人間はえてして「知らない人の話」は警戒して聞き、「嫌いな奴の話」は低い評価をします。
「相手が自分への配慮をしてくれていない」と感じると、不愉快になります。
「よくわからない専門用語を使って説明をする人」は、「こいつ、嫌い」という感情を呼びやすいです。
でもビジネスの現場で「こいつ、嫌い」という感情を出すことはないため、「専門用語がわからない」という言葉に変換されて表現します。
一方専門用語を使わずに説明すると、「こんなこともわからない馬鹿だと思っているのか」と怒られてしまうかもしれません。
有効な対策は、「短時間・多頻度コミュニケーション」。
同じ時間話すのでも、1時間を1回よりも、5分を12回の方が好かれます。
まとめ:ITエンジニアこそ、文章を書けるようになりたい。
ITエンジニアは、本来多くの富を作り出しています。
けれど、ITの技術は目に見えません。
実際にプログラミング経験のある人以外には、大変さもわかりません。
わからないものには、価値が無い。
この法則は、ITエンジニアにも適応されます。
だからこそ、わかってもらうためのツールである文章力を磨くことが大切になります。
『エンジニアのための伝わる書き方講座 文章嫌いではすまされない!』は、ITエンジニアのための、伝わる文章を書く方法を学ぶ本です。
新聞や雑誌はお手本にならないというだけに、Webライターや小説家には向かないかもしれません。
でもITエンジニアになら、きっと役に立つ1冊です。
以上、
エンジニアが100%技術力を活かすための、伝わる文章を書く方法。『エンジニアのための伝わる書き方講座 文章嫌いではすまされない!』
でした。
ぜひ、手に取ってみてください♪
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